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2021.01.30 203PV

“伝統”は古くない!前掛け専門店エニシング

エニシング

日本伝統の前掛け

居酒屋さんや八百屋さんがつけている「前掛け」。正式には帆前掛けと言います。最近ではキャンプの必需品でもあるようですね。

皆さんは、帆前掛けにどんなイメージを持っているでしょうか。

職人技によって作られる伝統品というものに、やはり古さを感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今、日本の伝統品は、“新しく”、“クール”なものになっているのです。

 

新しく、クールな前掛け

たとえ伝統品でも、アニメやマスコットのキャラクターがデザインされると、キャラグッズに早変わり。様々な分野のファンからの注目も集めます。さらにはオーダーメイドで好きな絵柄をデザインすることもできます。お祝い事などでのプレゼントにぴったりです。こうして前掛けに対する新たな需要を見出しました。

またエニシングの前掛けは、世界各地のギャラリーで展示され、外国の方たちから「クールだ!」と評判。東京に展開するニューヨーク近代美術館MoMAのストアでも売られています。“MAEKAKE”という言葉が、世界でも少しずつ広がろうとしています。

エニシング前掛け

(左から、シンガポールのデザイナーとのコラボ前掛け、トヨタ産業技術記念館コラボ前掛け、有松絞コラボ前掛け)

 

新しさと古さ、どちらもが魅力

前掛けの持つ魅力は、その新しい在り方だけではありません。

前掛けを締めることにより、骨盤のバランスが整えられ、腰への負担が軽減します。また太い糸で織られた分厚い生地が、怪我や熱から守ります。昔から前掛けが重宝されていた理由の一つです。

エニシング前掛け生地

エニシング工場4

エニシング工場1

そして、工場で前掛けを織るのは、なんと100年前に製造された織機。今も9台が現役で稼働しています。その9台を動かすのは、たった1つのモーターだというから驚きです。少しの電力でそれだけの機械が動かせることに、外国でもエコの観点から注目する人がいます。

新しいばかりじゃないのです。新しい可能性を存分に秘め、かつ先人の知恵が生かされているからこそ、前掛けは「クール」なのです。

 

何よりも大切なのは「熱意」

帆前掛けも、他の日本の伝統品と同じように消えつつあるものでした。

エニシングの創業者、西村社長はそんな前掛けと出会い、周りの誰もがやっていないことをやりたい、その思いに応えるのがこの前掛けだと思いました。人口の多い分野で激しい競争を生き抜くよりも、まだ誰も開拓していない道を進んでいくことに、強い熱意を持ちました。

エニシング工場2

西村社長はこう仰っていました。

何かをするには「決断」が必要です。

「決断」は、決めるという字と断つという字からできています。何かに向かって進んでいくとき、他の道は捨てなければいけません。仕事をしていると、毎日何十回と将来に関わる重要な決断をします。

不安だから、色んな道もちょっとずつ進む…それじゃどこにもたどり着けない。打算があると、嫌なことはやりたくなくなります。でも本当にやりたいと思っていれば、どんな道でも突き進めます。

だから、「伝統品を守りたくて…」といったような表面的な綺麗事よりも、人の内面、この仕事を本当にやりたいという“熱意”をみています。

 

「縁」が生み出す道

もう一つ大事にしているのが、名前の由来にもなった「縁(えにし)」。

西村社長は、未来のビジョンを実現し、新たな道を切り開くきっかけを作るのに、様々な縁がとても重要だと考えています。

 

エニシングの従業員は9名。20代の職人もいます。そんな従業員たちのアイデアは、常に交換できるようにしています。キャラクターとのコラボというのは、従業員の方の発案です。仕事に熱意のある従業員と、従業員の個性があふれるアイデアと、伝統品である前掛けとの、これも一つの縁と言えます。

 

また、豊橋駅の隣、二川駅から徒歩5分という立地に工場を作ったのも、海外や日本全国から来る人が新幹線を使って来やすいようにという目的がありました。山奥に工場を作る方が安価ですが、実際に織っているのを直接目で見てほしいという思いがあったからです。

さらに海外のどこにギャラリーを開いても、必ず従業員が現地に行き、見に来るお客さんの対応をします。これも、人と人が直接関わることを大切にしているからです。

エニシング工場5

エニシング工場3

直接目で見て話を聞くということがいかに影響が大きいかというのは、私自身が経験しました。

私は前掛けに馴染みを感じていませんでしたが、稼働する織機の迫力に圧倒され、かっこいいと感じました。社長の話を伺い終わるころにはすっかり前掛けに愛着が湧き、工場周辺の飲食店や商店の店員さんがエニシングさんの前掛けをしているのを見ると嬉しくなったほどです。

西村社長は、私の体感したことの重要性を知っているからこそ、直接的に縁を作ることに労力を惜しまないのです。

 

熱意と縁が紡ぐ未来

『おもしろき事もなき世をおもしろく』

幕末の長州藩士、高杉晋作の有名な句です。「面白いことのない世の中を面白くしてやる。」という意味になります。西村社長は何度もこの言葉を口にしました。

 

この句には続きがあります(別の人が加えたという説もありますが)。

『おもしろき事もなき世をおもしろく すみなすものは心なりけり』

「面白いことのない世の中を面白く過ごすには、心次第なんだなあ。」

 

今は特に世界的にパンデミックが起こっており、外にも気軽に出られなくなってしまいましたが、どんな時代でも、その時代ならではの生きづらさはあると思います。

世の中自体を変えることは、どれだけの意気込みがあっても、一人ではとても難しいことです。とはいえ不満をこぼしていたら、変わらない世界の中で、いつまでも面白くないままです。

楽しく生きるためには、こんな世の中でも楽しく生きようと思う心が必要なのです。

 

今の私には若さがあります。何に熱を注げるかを探し、未来を見る力を養う段階です。やってみたい「熱意」があるなら、なんでもやってみればいい。そうやって経験を積んで、可能性を広げ、未来へと続く新たな「縁」を生み出すきっかけを作ることが重要だと、西村社長が教えてくださいました。

 

今回エニシングさんを取材して、慎重派で臆病な私には、前に進んでみることの希望を与えられました。紫色に染めた髪を大切にしてほしいと言われましたので、たとえ染められなくなっても、自分の個性を潰さず、違う形でも表現できるような道を作っていきたいと思っています。

 

この記事を書いた人

麗音

麗音

筑波大学 生物学類

愛知県岡崎市出身。美術館が好きです。自らもアーティストとして模索中。地元愛を発信できたらなと思います。