
この記事では「SNSでモノが売れるのか?」というテーマについて書かれた、飯高悠太さんの著書「僕らはSNSでモノを買う」をご紹介します。
SNSの広がりによって、誰もがメディアになりうる時代。飯高さんはこれまでに東証1部上場企業を含め100社以上のコンサルティングを経験、Webマーケティングメディアferret立ち上げにあたり、創刊編集長として参画、現在は株式会社ホットリンクで執行役員CMO(マーケティング責任者)を務めています。(2021年8月現在)
テレビCMなどのマス広告に多額の予算を使わなくても、話題を作ることができるようになりました。
この時代の特性を、商品やサービスの認知拡大や販売につなげられたらいいですよね。
この本では、SNSを有効に使って多くの人に情報を伝え、話題を広げ、購入につなげるにはどうしたらよいか?について紹介しています。
カギになるのは「UGC」と、それを起点にした「ULSSAS(ウルサス)」とのこと。
UGCとは?ULSSASとはいったい…?
目次
SNSでモノが売れるか
この問いに対して本書は明確に「売れる」と答えています。
SNSはリアルな購買に影響を与えているのです。
ただし、人の購買行動に影響を与えるようなSNS戦略を取ることが必要とも言っています。
SEO対策やリスティング広告は、悩みや願望が顕在化している顧客にしか届かない
あるキーワードを検索した際に、自社の商品やサービスが検索結果の上位に示されるようにする「SEO対策」、あるキーワードを打ち込んだユーザーに対して、そのキーワードに関連する広告を表示する「リスティング広告」…これまでは、顧客にモノを買ってもらうためにこのような広告手法が有効でした。
こういう手法でモノを探す顧客は、自分が何がほしいか分かっている顧客、つまり「この商品を買いたい」と思って検索をしている、「顕在化している顧客」なのです。
しかし、これからの少子高齢化時代、顕在化している顧客を相手にしているだけではマーケットは広がらないのです。
→cf:「顧客は自分が欲しい物を知らない」(「マーケティング」③ 市場は何を求めているか「4P分析」、「マーケットイン」と「プロダクトアウト」参照)
情報の99%は届かない
世の中には130兆ものウェブページがあるといいます。
そして、年間検索回数はなんと2兆回!!
どちらも天文学的な数字です。
情報の99%は、届けたい相手に届きません。
親しい人の言葉はきちんと届く
日本、アメリカ、中国で行われた「何が購買に影響を与えたか」という調査結果では、3ヶ国とも「家族や友人、知人からの推薦」という回答が1位になっています。(出展「デジタルメディア利用実態グローバル調査」)
どれほど情報が届きにくい時代になっても、家族や友人、知人といった親しい人からの情報はちゃんと届くのです。
つまり、ユーザーは玉石混交の情報の中から、企業の広告ではなく、親しい人からのオススメを信頼する傾向にあるのです。
「UGC」が大切
本書では、今後のSNS戦略で大切なのは「UGC」であると述べられています。
U User 利用者が
G Generated 作り出した
C Contents 内容、中身(コンテンツ)
UGCとは「ユーザーが作ったコンテンツ」、つまり企業が打ち出す広告ではなく、ユーザー自信が自分の意思で作り上げたコンテンツのことです。
食べログや価格.comの個人レビューを参考にして行く店や買う商品を決めたことってありますよね?この個人レビューもUGCです。
個人の投稿のほうが、企業広告よりも大きな力を持つときがあります。
UGCの具体例
ツイッターやフェイスブック、インスタのユーザー投稿、コメント、写真や動画…これらはすべてUGCです。
UGCを通じて自然発生する口コミが、これからの時代のSNSマーケティングの要になります。
「UGC」の効用
友人がオススメしていた商品が気になり興味をそそられると、今度はその商品を「具体的な商品名」で検索しますよね。これを「指名検索」といいます。
この「指名検索」が増えると売上が伸びます。
なぜなら、調べる時点でそのユーザーは、もう「買う気マンマン」になっているからです。
つまり個人が発信したUGCが、別のユーザーに「興味喚起」→「指名検索」→「購買」というように行動を変換させたのです。
UGCの効用
- 指名検索が増える
- コンバージョン率が上がる
- ユーザーに届きやすい
- ユーザーの行動変換(指名検索からの購買行動)を起こしやすい
- 企業広告よりシェアされやすい
UGC(個人のつぶやき)の拡散のされ方
例えばある企業が「総額100億円あげちゃいます」という消費者キャンペーンを実施した場合を見てみましょう。
企業側としては、「100億円キャンペーン」をやっていること自体を、キャンペーンページのリンクを貼ってシェアしてもらいたいと思うのですが、実際は…
☓「〇〇が100億円キャンペーンやってるよ。詳しくはこのWEBまで」
というふうにはなかなかシェアされません。
でも、もし一般のユーザーが
◯「100億円のキャンペーンで300円しか当たらなかった(T_T)」
とつぶやいたらどうでしょうか。
100億円と300円の落差がおもしろくてついシェアしたくなると思いませんか?それが友人、知人のつぶやきだったらなおさらですよね。
すでにキャンペーンを宣伝していることになっていますよね。
UGCが出やすい商品
・人に推奨しやすい(お菓子、飲料、映画)
・自己表現として投稿されやすい(アパレル、コスメ)
・商品が手に取れる
UGCが出にくい商品
・コモデティ商品かつ情緒的価値がうすい(乾電池、ゴミ袋)
・コンプレックス商材(カツラ)
・購入される数が極めて少ない(キャンピングカー)
SNSマーケティングとして集めるべきフォロワーは?
では、UGCを拡散してもらいやすくするために、集めるべきフォロワーはどんなタイプでしょう?
①300フォロー 10,000フォロワー 3,000ツイート
②2,000フォロー 350フォロワー 10,000ツイート
③30フォロー 50フォロワー 50,000ツイート
それはズバリ③のタイプです。
①はいわゆるインフルエンサータイプです。こういうユーザーは、まず自分をフォローはしてくれませんし、RTもしてくれません。
②のタイプはフォロー数が多すぎてタイムラインが流れてしまい、情報が届きにくいです。
③は世界につながるSNSという場でも、リアルな関係に近い濃密なつながりを形成しています。ツイート数も多く、情報拡散につながる可能性大です。
著者は③のようなリアルな関係に近い濃密なつながりのことを
「スモール・ストロング・タイ」(小さくて強いつながり)
と名付けています。
このスモール・ストロング・タイの連鎖でUGCが広まると、それはほかの情報よりもずっと信頼され、購買につながる率も高くなるとしています。
「バズ」は必ずしも「インフルエンサー」によって起こっているのではない
「バズ」が起こりやすい流れの一つに、親しい人からシェアされた情報に共感、それをまた親しい人にシェア、さらにそれが共感を呼んでシェアされてやがて「バズ」に…というのがあります。
UGCからバズを作りたいなら、③のようなスモール・ストロング・タイを形成しているユーザーをターゲットにするべきです。
そういうユーザーたちが自分の商品をつぶやいているのを見たら、公式アカウントでリツイート&フォローしてあげると、フォロー返しをしてくれる可能性も高いですし、つぶやきが多い人でしたらつぶやいてくれるハードルも低いです。
また、今後もその商品についてつぶやいてくれる可能性も高いと思われます。
ULSSAS(ウルサス)(UGCを活用したマーケティング)
UGCを作ることができたら、今度はそれをマーケティングに活かす方法です。
本書ではSNS時代のマーケティングの要は、UGCを活かした「ULSSAS(ウルサス)」だと述べられています。
ULSSASのそれぞれの文字の意味は下記のとおりです。
U UGC ユーザーの投稿(ユーザーの口コミなど)
L Like いいね!(リツイートも)
S Search1 SNS内の検索(リアルな評判の検索)
S Search2 WEB検索(知識や詳細の検索)
A Action 購買
S Spread 拡散
このプロセスでは、まずUGCが起点になっています。
次いで、その投稿に対して共感を覚えた人の「いいね!」やリツート。
そして共感をした人の中から、商品やサービスを検索する人も出てきます。
この検索ですが、今の世の中、GoogleやYAHOO!などの検索エンジンで検索する前に、SNSで検索をするユーザーがどんどん増えています。
まず商品やサービスに対する「リアルな評判」をSNSで確認したのち、そこで得た「知識」を検索エンジンで調べて詳細な情報を得る、という手段をとるユーザーが増えているのです。
そして購買するというActionが生まれ、それを購入した人たちがレビューをSpread(拡散)することによって新しいUGCが生まれるのです。
まとめ
この記事では、飯高悠太さんの著書「僕らはSNSでモノを買う」を要約し、SNS時代のマーケティング手法UGCとULSSASについて紹介しました。
誰もがメディアになりうるSNS時代、人は自分が信用している人が発信している「情報=UGC」を信頼し、UGCで得た情報をSNSで検索してリアルな評判を把握し、そののち検索エンジンで詳細な情報を検索、購買、拡散という行動を取るという「プロセス=ULSSAS」がマーケティングの要になります。
本書では、テレビCMなどのマス広告にお金をかけなくても「強い絆をもつ小さなつながり」に情報が届けばUGCが生まれ、ULSSASというサイクルが回りだして商品やサービスの購入につながっていくというマーケティング手法が、とてもわかりやすい文体と、後輩たちの疑問に答えていく会話文で語られていて、マーケティングやSNSの分野に詳しくない方でもスラスラと読めます。
「誰もがメディアになりうるSNS時代」、UGCを活用したULSSASというマーケティング方法は、マーケターや企業の広告担当はもちろん、広告費に予算をさけない個人事業主や、創業したての企業にとっても大きなヒントになるでしょう。
本書には、ここで紹介した内容だけでなく「具体的な例を用いたUGCの生み出し方とULSSASを発生させる道筋」、「一過性の「バズ」ではなく連鎖的、持続的に認知を増やす方法」、「数字の解析方法」など、SNSマーケティングの核心が詳しく書かれています。
余談
私はテレビ広告の世界で20年以上過ごした経験があります。
1991年にテレビ局に入社したのですが、当時、消費者の購買プロセスは「AIDMA(アイドマ)」という言葉で説明されていました。
それぞれのアルファベットの意味は以下のとおりです。
A Attention : 注目、商品やサービスについて知る
I Interest : 興味を持つ
D Desire : 欲しいという欲求
M Memory : 記憶する
A Action : 購買行動
このAIDMAはなんと1920年代に提唱されたフレームワークだそうです。
私がテレビ局に入ったのが1991年で、その後もしばらくAIDMAが使われていましたから、消費者の購買プロセスを表すフレームワークの代表として70年以上も君臨し続けていたのですね。
それにしても、Dのほしいという欲求が起こってから、Mの記憶するという過程を経て、ようやくAという購買行動に移るところが「いったん冷静になる時間」を置いているようで牧歌的に感じるのは私だけでしょうか。
(本来の意味は、広告などで商品に気づいたら、その商品を記憶して実際に店頭に買いにいくという過程を表しています)
インターネットが普及してから提唱されたのが「AISAS(アイサス)」です。
Attention : 注目、商品やサービスについて知る
Interest : 興味を持つ
Search : 検索
Action : 購買行動
Shere : 共有する
これは2000年代に入って電通が提唱したモデルで、欲求と記憶に代わってSearch「検索」が置かれ、購買行動のあとにShare「共有」が置かれているところがインターネット時代の到来を感じさせます。
当時電通で行われた「AISAS」モデルの発表会に私も立ち会っていたのですが、一通り説明が終わったあと、電通の偉い方が壇上に上がられ「いいですか、皆さん、これからはアイサスです。アイサスの簡単な覚え方があります。「愛がなければさすれない!」こう覚えてくださいっ!」と大声で演説され、会場全体が微妙な空気になったことを今でも覚えています。
しかし、20年近くたったいまでもそのことを覚えているのですから、この電通の偉い方のマーケティングは正解だったのでしょう。
愛がなければさすれない「AISAS」も、これからは「ULSSAS」。
あの偉い方がいたら「ULSSAS」をなんと表現したでしょうか。
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