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2021.06.26 352PV

【芸術】想像を超えた創造、認定NPO法人ポパイの舞台芸術とは

認定NPO法人ポパイ

こんにちは!

みなさんは「アール・ブリュット」という言葉を知っていますか。

アール・ブリュットとは1945年にフランスの画家が命名した障害者芸術の概念です。

“感性のない野生的な芸術”と説明すれば良いでしょうか。そのまま訳すと「生の芸術」になります。なかなか難しい概念ですよね。

近年、障害者の文化芸術活動が注目されており、平成30年には、障害者による文化芸術活動の推進に関する法律が施行されました。

今回取材させていただいた名古屋市北区にある「認定NPO法人ポパイ」さんは、東海地方の中で特に文化芸術活動に力を入れていると言っても良いでしょう。

福祉の発想を超えたクリエイティブな取り組みをご覧ください!

 

ポパイの文化芸術活動

「アトリエ・ブルート」はアート活動(絵画造形)を主軸とした生活支援を行っている生活介護事業所です。

アートを通じてひとりひとりが人生を楽しみ、役割を見出し、そして羽ばたけるような場所を目指しています。

また、ポパイではアトリエ・ブルートの絵画造形以外に舞台芸術活動も行っています。年間公演数も多く、とても活動的です。

今回はポパイの文化芸術活動の中でも舞台芸術について取り上げていきます。

 

パフォーマンス集団「ウゴクカラダ」

パフォーマンス集団「ウゴクカラダ」は2013年11月に誕生しました。

身体を動かす活動として何かできないかと考えた時、当初は和太鼓を使った活動を考えていたそうです。しかし、和太鼓を何台も準備をして大きな音を出せる場所が近隣では見つからず、断念しました。

これを受け、自分たちが一番表現しやすいのは身体そのものを動かすダンスだと気付きます。そんな時に偶然に現在のダンスの講師と出逢い、ダンスの活動がスタートします。

そんなウゴクカラダは、2016年よりオーストラリアの団体と共同で舞台芸術を継続的に実践しています。すごいですよね。舞台芸術と国際交流を同時に体感できる機会を提供している福祉施設はなかなかありません。

 

詳細は文化庁が掲載している「令和元年度障害者による文化芸術活動推進事業の事例集」を見てみてください。

https://www.bunka.go.jp/seisaku/geijutsubunka/shogaisha_bunkageijutsu/kyosei/pdf/92502001_01.pdf 

 

音楽バンド「ポパイ座銀河団」

出典:認定NPO法人ポパイHPより https://mo-ya-co.info/category/popaizagingadan 

 

音楽バンド「ポパイ座銀河団」は2014年に誕生しました。

きっかけは、ご利用者の音楽をやりたいといった声だったそうです。

最初は支援の一環として活動しており、音遊びを中心に活動していました。そんな中、舞台に立ちたいといったご利用者の声があり、音楽講師の川名さんを迎えバンドとして活動することになります。

そんなポパイ座銀河団は、コンテストに出場するほど意欲的に活動しています。

なんと、一般のコンテストでも受賞されているんです。

 

芸術活動を取り入れるきっかけとは

ポパイの芸術活動は2010年に始まりました。

 

元々理事長がアート好きだった

-何故、芸術活動を取り入れようと思ったのですか。

 

パフォーミングアーツ担当 山口さん

実は、理事長がアートが好きだったんです。

ポパイでクリエイティブな過ごし方ができないかを考えた時に、アーティストをお呼びしました。

 

-早速プロの方をお呼びしたんですね!

 

山口さん

そうなんです。(笑)

コーディネーターに入っていただき、アーティストの方と半年間かけてワークショップを開催したことが始まりでしたね。

 

障がいのある方との芸術活動は面白い

招いたアーティストはインスタレーション・アーティストとして活動されている方だったそうで、ワークショップは非常に刺激的なものになったと言います。

インスタレーションとは、“ダンス” “美術“ といった作品を単体としてではなく、様々な分野を巻き込み、場所や空間全体を作品として体験させる芸術のことです。

日本では、水玉模様をモチーフにしている草間彌生さんが有名ですね。

ワークショップでは、“みんなお母さんになりたいのです”をテーマに、エプロンを着けて公園でパフォーマンスしたり、室内で料理をしたり、様々な体験をしたそうです。

これを受け、障害のある人との芸術活動は面白い!ということで本格的に活動が始まったと言います。

この数年後にアトリエ・ブルートが設立され、創作活動を求めて通う利用者の方が増えました。

 

舞台芸術はボランティアではなく仕事

出典:あいちアール・ブリュットHPより https://www.aichi-artbrut.jp/newsreport/newsreport-609 

 

ポパイでは舞台芸術を“仕事”として捉えています。

福祉のイベントでも一般のイベントでも自分たちの価値を提供すべく、出演料は必ずいただいていると言います。

 

利用者も職員も講師も一緒になって取り組む

出典:認定NPO法人ポパイHPより https://mo-ya-co.info/olive/3006.html 

 

実は、先程紹介したウゴクカラダもポパイ座銀河団も“混ぜこぜ”のグループなんです。

ウゴクカラダはご利用者と職員で構成されており、ポパイ座銀河団はご利用者と職員に加え講師も参加されています。

 

山口さん

舞台芸術において、職員がご利用者に対してお膳立てをするようなことはしません。やるからには職員も一緒になって踊ります。

 

音楽講師 川名さん

作詞はご利用者が並べた言葉を元に進めていきますし、作曲は彼らの強みが発揮できるようなものを作っていきます。

 

障害の有無に関係なく、自由に楽しく好きなことを好きと言える環境、大事ですね。

 

舞台に立つまでの道のり

みなさんは舞台裏の様子をご存知でしょうか。

日々の練習はもちろん、様々な書類の作成や会場のスタッフとの調整も舞台に立つために必要なことです。

障害のある人も舞台に立つとなると必要なことが増えてきます。

例えば、ご利用者のスケジュール表を作成するだけでも大変です。

ご利用者の特性に合わせた設備は整備されているのか、更衣室は共有なのか否か、食事の有無の確認、親御さんやグループホームの職員との日程調整等々、確認事項は膨大にあります。

日中は支援している中での業務になってくるので、大変であることは想像がつきますよね。

また、舞台の経験がある職員ばかりでないため、職員のチームワークも求められます。

 

法人内だけで完結させない

出典:認定NPO法人ポパイHPより https://mo-ya-co.info/about.html 

 

ポパイでは、実験的・福祉的まちづくり「MO-YA-CO TOWN」に取り組んでいます。

「MO-YA-CO=もーやーこ」は、名古屋弁で「分けっこ、持ち合い」を意味する言葉です。

分けっこや持ち合いができる街を作ろうというポパイの理念から、舞台芸術においてもその理念を大切にしています。

 

様々な学びを得ることができる

先程もあったように、ポパイの舞台芸術活動では講師の方をお呼びしています。

講師も加わることで、化学反応を生み出し、創造性を高めることができます。自分の好きなことに意欲的になれるきっかけになりますね。

また、ロゴのデザインはデザイナーに依頼しているそうです。

デザイナーと関わることで、彼らが障害者福祉について感じていることを知ることができたり、自分たちの当たり前が福祉に携わっていない人たちにとっては未知なことであることに気付くことができたりすることができると言います。

こういった関係を築くことは、自分たちの学びのためでもあるし広がりのためでもあると山口さんは話されていました。

新たな価値観やアイデア視点を知ることができることは、どんな分野においても言えることです。障害の有無は関係ないですね。

実際に活動されている様子を見学させていただきましたが、自分の特性を存分に魅せている姿に、ポパイの舞台芸術活動は素敵であると感じました。

 

繋がりを増やすことができる

講師やデザイナーといった外部の人と関係を築くことで、新たなコネクションが広がることもメリットです。

ウゴクカラダやポパイ座銀河団の舞台出演の機会をいただけたり、講師の知人が興味を示したりすることがあると言います。

障害のある人と関わる機会が少ない人にとっては、刺激的であると思いますし、多様性について考えるきっかけにもなりますね。

繋がりが繋がりを呼ぶ。与える者は与えられる。

この二つは私が日々感じている言葉なのですが、ポパイの活動についても同じことがいえると感じました。

 

おわりに

みなさん、どうでしたか?

障害者が舞台で活動することについて驚いた方もいるでしょう。

障害者は文化芸術活動をすることが困難であるといった概念は、支援者が障害者の強みにアプローチする際の葛藤の原因として現れていると私は考えます。

その概念を超えた時に、障害者の強みを創造性あるものに進化させることができるのではないでしょうか。

今回の取材を通して、障害者による文化芸術活動は、障害の有無に関係なく一緒になって楽しむものであることを感じました。

利用者の強みを作品として創出させ、多様性をありのままに表現しているポパイの舞台芸術。

 

ポパイのパフォーマンス、見てみませんか?

きっとあなたの想像を超えるものを魅せてくれます。

 

基本情報

〈認定NPO法人ポパイ〉

住所:名古屋市北区志賀南通2-51

TEL:052-508-9035

アクセス:地下鉄名城線「黒川」駅下車 

HP:https://mo-ya-co.info/ 

Instagram:https://www.instagram.com/ugoku_karada/(ウゴクカラダ) 

Instagram:https://www.instagram.com/popai_za_gingadan/(ポパイ座銀河団)

YouTube:https://www.youtube.com/channel/UCXRvfFBMTD1MHCYAMpgzXMw 

 

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この記事を書いた人

Miku

Miku

椙山女学園大学 人間関係学部

愛知県刈谷市出身。社会福祉学を専門にしており、名古屋を中心に社会福祉施設で活動中。2020年8月よりヴィーガン生活開始。