今回は、製作委員会にはどんなメンバーを集めたらよいかについてお話したいと思います。
目次
製作委員会のメンバー(一般的なパターン)
一般的な製作委員会の顔ぶれはこんな感じになります。
製作委員会に参加し他メンバーで、それぞれのリソースを活かして映画を成功に導くよう努力をしていくことになります。
これを実例で見てみるとよりわかりやすいです。
2021年5月23日現在公開されている映画「お終活」の製作委員会の顔ぶれをご覧ください。
映画「お終活」の製作委員会メンバー
©2021年「お終活」製作委員会
これは実際のエンドロールからの抜粋です。
映画を鑑賞すると最後に「エンドロール」というものが出てきますが、たいていの場合そこに「〇〇製作委員会」のメンバーが表示されます。
「お終活」製作委員会メンバーを先ほどのリストにあてはめるとこうなります。
①配給会社
イオンエンターテイメント
②メディア(テレビ局など)
東海テレビ、中広
③タレントプロダクション
フォーチュンエンターテイメント、タニプロモーション
④パッケージ(二次利用)
AMGエンタテインメント
⑤興行会社
イオンエンターテイメント
⑥その他
ドゥ.ヨネザワ企業グループ、イニット・インク、フォワードインターナショナル
製作委員会メンバーの役割
それでは、製作委員会メンバーの役割を順番に見ていきましょう。
①配給会社
その作品を、どれだけの映画館の、いくつのスクリーンで上映してもらうか営業します。
スクリーン数をできるだけ確保することが興行収入という「売上」を上げることにつながります。
なので、配給会社が製作委員会に参画している場合、スクリーン数を確保することが自社へのリターンに直結するので、利害の一致が生じて、リソースがより有効に活かされることになります。
イオンエンターテイメントは映画館を運営する興行会社の側面も持っているので、まずは自社のスクリーンを確保できるというメリットもあります。
②テレビ局(メディア)
自社の媒体を利用してプロモーションを行うことができます。
映画も完成させただけでは誰のもとにも届きません。宣伝が非常に重要なのです。
メディアが参画することで、例えばテレビ局なら宣伝用のミニ番組を作って放送をしたり、ニュースやワイドショーでその映画の特集をしたり、スポットCMを空き枠で放送したりできます。
もっと戦略的な場合は、テレビで連続ドラマを放送し、その結末や続き、スピンオフを映画で、というケースもあります。ドラマを放送すること自体が宣伝になるのです。
新聞社や雑誌社が参画した場合も、紙面や誌面を使うことができます。
そうやって自社メディアを使って宣伝することが興行収入に結びつき、自社へのリターンにつながります。
メディアが参画することで、限られた宣伝費でより効率的にプロモーションを行うことができるのです。
「お終活」は映画内の舞台設定を「不詳」としていますが、名古屋に本社を置く一柳葬具總本店を撮影の舞台にしていて、ロケの大部分を名古屋で行っています。
また、主演の水野勝、松下由樹さんも名古屋出身です。
名古屋にゆかりのある映画ということで、東海テレビ、そして東海エリアを中心にフリーペーパーを全国展開している中広が参画しています。
③タレントプロダクション
タレントプロダクションも製作委員会に加わることがあります。
出演者として演技に全力を注ぐことはもちろん、映画完成後は自分が出演する番組やSNSでの宣伝、舞台挨拶などで映画を売り込みます。
役者にとっては、映画の認知を広げることが、自らの宣伝になります。
プロダクションにとっては、映画の成功が自社タレントの人気や認知をアップさせ、リターンにもつながります。
④パッケージ(二次利用)
二次利用収入が最大限になるように戦略を練ったり、営業をする機能を担います。
映画は興行収入という一次利用収入の他に、二次利用収入というものもあります。
後日DVDとして販売することや、地上波やBS、CSでのテレビへの番組販売、飛行機の中での上映、NetflixやAmazon Primeなどでの配信による収入がそれにあたります。
かつては、映画→DVD販売という流れが王道だったのですが、現在は個人の視聴形態が変わり、配信プラットフォームへの販売が主流となりつつあります。
⑤興行会社
映画館を運営する企業です。
映画館は原則として、興行収入(有料入場者売上)の約40〜50%を得ることができます。
製作委員会として参画した映画が当たれば、リターンと興行収入の両方が得られます。
そのため、興行会社が製作委員会に名を連ねた場合、上映館数やスクリーン数を最大限確保できるというメリットが生じます。
⑥その他
イベント会社や広告会社、あるいは独自のソリューションを有するメンバーが参画し、映画の成功にリソースを注ぎます。
「お終活」におけるドゥ.ヨネザワ企業グループは、制作会社フレッシュハーツの親会社として、また、九州一円における影響力を活かして福岡〜熊本でのプロモーションを担っています。
イニット・インクはWEBメディア制作を通じて映画のプロモーションを担いました。
フォワードインターナショナルは、幹事社として製作委員会の組成と運営、全国の放送局とのつながりを活かして各地でのプロモーションや番組出演枠の確保を行いました。
製作委員会まとめ
ここまで見てきたように、製作委員会というのは、集まった仲間たちがそれぞれの分野で力を発揮しあい、チームの能力を最大限に持っていくことで利益を最大化して、それぞれのリターンにつなげるという「利害一致チーム」なのです。
具体例を使ってメンバーの個性、役割を一つ一つ見ていくとより理解が深まったのではないでしょうか。
今度から映画を観るときは、エンドロールが終わるまで席を立たずに、「製作委員会」のメンバーをチェックしてみてください!
その映画に、どういう人達がどういう思いで参加しているのか想像するのも楽しいですよ。
(つづく)